【居室の換気】24時間換気は必要?

24時間換気は必要?
電気代がもったいない気がする

せっかく暖房をつけているのに、給気口から冷たい空気が入ってきて不快
給気口は閉じてもいい?

結論:住宅において24時間換気は必要です

臭いや湿気が気になる時だけ換気すればいいわけではありません。

住んでいる人の健康や家の長寿命化のために換気はとても重要です!

この記事では、換気の必要性や換気方式について、ご紹介させていただきます。

目次

換気が必要な理由

外の空気をあまり入れない方が快適であるようにも思えますが、なぜ換気が必要なのでしょうか?

空気汚染

特にクロルピリホスホルムアルデヒト等を含む建築材料は、目・鼻・喉の刺激や吐き気、めまい等の症状が現れる可能性があり、シックハウス対策として使用禁止や制限されています。

また、有害物質を含む建築材料を使用しなかったとしても、家具や生活用品には制限がないため、知らない間に有害物質を家の中に持ち込んでいる可能性があります。

換気をしないと人に有害な物質が家の中に滞留してしまうため、常に換気を行い外の新鮮な空気と入れ替える必要があります。

建築基準法で換気設備に関する規定が設けられている理由は、このシックハウス対策です

シックハウス症候群

  • 新築やリフォームした家に住む人が様々な健康障害に見舞われる現状
  • 原因にはカビ、ダニ、ハウスダスト、花粉に加えて、建材から放散される化学物質等も含まれる
  • アレルギー反応や呼吸器系障害を引き起こす可能性がある

結露・カビ

建築基準法ではありませんが、家の中の結露を防ぐために換気をすることも重要です。

結露は窓ガラスで発生するイメージがあると思いますが、普段目につかない壁の内部や押し入れの奥などでも発生します。

最も重要な構造体が結露することは、家の寿命が短くなる原因となります。

また、結露によって濡れた箇所にカビが発生すると、目に見えない胞子を吸い込んでしまい、住む人の健康に悪影響を及ぼします。

空気の滞留がない場所や長時間人が滞在するリビングなど湿度が高い場所で結露は発生しやすくなるため、特に冬場は窓開け換気をすることも結露の抑制に有効です。

建築物環境衛生管理基準

ビル管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)では、不特定多数の人が利用する特定建築物の室内環境を管理することを義務づけられています。

住宅には関係ないかもしれませんが、基準値として参考になります。

室内環境の基準値は以下の通りです。

項目基準値
浮遊粉じん0.15mg/㎥以下
一酸化炭素 CO16ppm以下
※令和4年4月1日以降
二酸化炭素 CO21,000ppm以下
温度18℃以上28℃以下
※令和4年4月1日以降
相対湿度40%以上70%以下
気流0.5m/s以下
ホルムアルデヒト0.1mg/㎥以下(=0.08ppm以下)

厚生労働省は、コロナ渦で室内が良好な換気状態になっているかを確認するために、CO2濃度が1,000ppm以下という基準を設けていました。飲食店や商業施設でCO2濃度計を見かけることも多かったと思います。

CO2を1,000ppm以下にするためには、1人当たり約30㎥/hの換気量が必要になります

法規制

2003年の建築基準法改正により、24時間換気システム設置が義務化されました。

計算上、必要換気量が確保できていないと確認申請が通らないので、建物を建てることができません。

換気のための開口部

建築基準法では、換気のための窓その他の開口部を設けることが規定されています。

その換気に有効な面積は、その居室の床面積の1/20以上としなければなりません。(建築基準法第28条2項)

ただし、床面積に対して1/20以上の開口部を設けられない場合は、機械換気設備が必要となります。

建築基準法令20条の2第1項一号

有効な換気面積が確保できない居室には、技術的基準に適合した、自然換気設備、機械換気設備、中央管理方式の空気調和設備又は大臣認定設備を設ける

開口部の面積

換気に有効な開口部面積は、窓全体の面積ではなく、開放できる部分で算出します。

下記の場合は、「W×H」が有効面積となります。

開口部が45°以上開かない場合は換気能力が落ちるため、開放角度を考慮して有効面積を算出する必要があります。

θ<45°の場合は、「W×H×θ/45」が有効面積となります。

必要換気回数

住宅の必要換気回数は0.5回/hです。

これは1時間で0.5回換気できる(=部屋の半分の空気を入れ替える)ことを示しているので、2時間で部屋全体の空気を入れ替える必要があることになります。

換気方式

換気にはどのような手法があるのでしょうか?

換気方式は、送風機を使う機械換気と、風力や温度差などを利用する自然換気とに大別されます。

それぞれの換気方式の違いについて、見ていきましょう。

機械換気

機械換気は、送風機を用いて強制的に給気・排気を行う手法です。

送風機の取付け側によって、第一種/第二種/第三種に分類されます。

第一種換気

給気側と排気側の両方に送風機を設置した方式です。

給気と排気を同じ風量することができるので、室内は一定圧に保たれます。

この方式を採用した場合、全熱交換器を設置することが多いです。

※全熱交換器:室内から排気する空気と室内へ給気する空気を熱交換することで、温度変化を低減し、空調負荷を削減します。

夏場にせっかく冷やした室内に、外部の生暖かい空気をいきなり入れるとまた冷やす必要があるので、排気する空気と給気する空気を熱交換し、室内の温度に近づけてから室内に給気すると、冷房負荷が低減できるという仕組みです。(冬場も同様です)

メリット
  • 建物の気密性に影響を受けにくいため、確実に換気量を確保できる
  • 室内を正圧にも負圧にもできる
デメリット
  • コストが高い
    • 機器・ダクト・設置などは、一般的に第三種換気よりコストが高くなる
  • 床置型の全熱交換器を採用した場合、機器を設置するスペース(機械室)が必要になる
  • 機器に装着されているフィルターを清掃する必要がある
  • 給気側のダクト内を清掃することが難しい
    • 高性能フィルターを装着しても100%除去することはできないため、ダクト内に少しづつ汚れが溜まり、室内に流入してしまう可能性がある

第二種換気

給気側に換気機器を設置する方式です。

住宅で採用されることはほぼありませんが、ご紹介だけさせていただきます。

メリット
  • 室内を正圧にすることができる
    • クリーンルームや食品工場など、清潔さが求められ外部の埃などを室内に入れたくない場所に適している
デメリット
  • 室内が常に正圧になるため、室内の湿気が壁などに吸収され結露を発生させやすくなる

第三種換気

排気側に換気機器を設置する方式です。

機械で強制的に排気させるため、負圧になった室内に引っ張られた空気が自然に給気される仕組みです。

一般的な住宅では最も採用されている手法ではないでしょうか。

メリット
  • コストが低い
    • 設備機器は排気側のみのためイニシャルコスト・ランニングコストともに安くなる
  • 室内が負圧(外気より低くなる)ため、室内の湿気が壁内への侵入しにくい
  • 給気側にダクトがないため、ダクト内の汚れが室内に流入する心配が少ない
  • 機器が排気側だけなので、清掃や交換のメンテナンスが比較的容易
デメリット
  • 建物全体に高い気密性が必要となる
    • 気密性が低い場合は家の隙間から空気が流入してしまうため、適切な換気を行うことができない可能性がある
  • 外気を直接給気するため、冷暖房負荷が大きくなる傾向がある

第一種/第二種/第三種はどれが良いのか?

住宅に通常用いられる換気設備は、第一種換気第三種換気です。

個人的にはコストメンテナンスの面から第三種換気で十分だと思いますが、経済的に余裕がある方や広い家に住んでいる方は第一種換気を採用すると良いと思います

最近の仕様の高い住宅では、第三種換気が採用されていることが増えています。

タワーマンションでは、上層階だけ第三種換気を設置し、下層階は第一種換気というように、同じ建物でも階数や価格帯によって換気設備が異なることもあります。

広い空間では換気による熱負荷の割合も大きくなりますが、ガラスや壁・天井からの熱負荷の方が一般的に大きいため、壁・天井の断熱やガラスの仕様アップを行い、まだ余力がある場合は第三種換気を採用するぐらいで良いと思っています。

自分が求める予算・住む家の広さ・メンテナンスの容易さによって、選択するとよいでしょう。

自然換気

自然換気は、風圧・温度差・気圧差を利用して換気を行う方法です。

送風機などの動力を使用しないため、省エネ性や環境配慮に優れています。

建築基準法では、自然換気を採用した場合の必要構造が定められています。

建築基準法施行令 第129条の2の6

  • 換気上有効な給気口及び排気筒を有すること
  • 給気口は、居室天井高さの1/2以下の高さの位置に設け、常時外気に開放された構造とすること
  • 排気口は、給気口より高い位置に設け、常時開放された構造とし、かつ、排気筒の立上り部分に直結すること
  • 排気筒は、排気上有効な立上り部分を有し、その頂部は外気の流れによって排気が妨げられない構造とし、かつ、直接外気に開放すること
  • 排気筒には、その頂部及び排気口を除き、開口部を設けないこと
  • 給気口及び排気口並びに排気筒の頂部には、雨水又はねずみ、虫、ほこりその他衛生上有害なものを防ぐための設備をすること

換気計画

換気は機器を設置すればOKというわけではなく、家全体の空気がちゃんと換気されるように、給気口・排気口の位置や風量をうまく計画する必要があります。

給気口と排気口の位置を適切に設けないと、家の中で空気が滞留してしまう場所ができてしまうためです。

また、風量が大きすぎると、扉の開け閉めが困難になったり給気口・排気口の風切音が気になるようになります。

家を計画するときは、家全体にどのように空気が流れるのかも検討してみるとよいでしょう

平面計画

第三種換気を採用した場合

第三種換気を採用した場合の平面計画の一例は、以下の通りです。

給気口と排気口が近すぎると、せっかく室内から排気した空気が室内に入ってしまいます。

給気口と排気口は適切な離隔を確保して配置すると良いでしょう。

運用

外気が直接入ってきて寒い・暑いという理由で、給気口を閉じたり、24時間換気スイッチをオフにしたくなることがあると思います。

実際に筆者がワンルームのマンションに住んでいた頃、冬場に給気口から入ってくる空気が冷たくて、給気を閉じたり換気スイッチを切っていたことがあります。

これでは部屋の中の換気ができず、知らない間に室内にどんどんCO2や有害物質が溜まってしまいます。

換気口は開け、24時間換気スイッチは常にONにして、正しく換気を行うことが大切です。

まとめ

・住宅の必要換気回数は、0.5回/h
・CO2を1,000ppm以下にするために必要な換気量は、1人当たり約30㎥/h
・住宅に通常用いられる換気設備は第一種換気第三種換気
・家の中に空気が循環するように、換気計画を行う
・いつも換気口を開け24時間換気スイッチをオンにして、正しく換気を行うことが大切

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この記事を書いた人

仕事:建築・不動産関係
転職回数:2回(ゼネコン、不動産など)
資格:一級建築士、建築設備士
趣味:旅行、カフェ、断捨離
住宅と転職をメインにのんびり更新していきます。住宅購入や転職に悩んでいる方の参考に少しでもなれば幸いです。
投稿内容に間違いがございましたらご指摘いただけると幸いです。

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